「マスカレード・イブ」 東野圭吾ー自分と作品の相性を考えてしまう。
#大衆小説 #推理小説 #現在 #ホテル #刑事 #ホテルクラーク #宿泊客の謎 #殺人事件
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9月22日の一冊
ホテルの話を読みたい方
軽いどんでん返しのような話がスキな方
映画化作品のその前が読みたい方
に贈りたいと思います。
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「マスカレード・イブ」 東野圭吾 集英社文庫 p366 文庫本
*あらすじ
ホテル・コルテシア大阪で働く山岸尚美は、ある客たちの仮面に気づく。一方、東京で発生した殺人事件の捜査に当たる新田浩介は、一人の男に目をつけた。事件の夜、男は大阪にいたと主張するが、なぜかホテル名を言わない。殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのか。お客さまの仮面を守り抜くのが彼女の仕事なら、犯人の仮面を暴くのが彼の職務。二人が出会う前の、それぞれの物語。「マスカレード」シリーズ第2弾のミリオンセラー。
第1話『それぞれの仮面』
山岸の元彼登場。部屋から消えた女を探せ!
第2話『ルーキー登場』
ホワイトデーの殺人。新米刑事・新田が捜査。
第3話『仮面と覆面』
謎の“女流作家"の秘密をファンから守り抜け!
第4話『マスカレード・イブ』
舞台は東京と大阪。准教授の鉄壁のアリバイ。
第1話は少し陳腐であまり好きになれなかったかな。
こういう話好きだなって思ったのは、第2話ですかね。
真実はいつも一つみたいな、そういう割り切りはできないってわかるのが納得。
第3話は、ありきたりといえばありきたりかな、、、。
第4話は、刑事ドラマによくある、、、結末。
第1弾の方は、昔夢中で読んだ記憶があったので、第2弾の方は少し軽くて、ありきたりすぎて、あんまりだったかもしれません。
逆に、「マスカレード・イブ」を読んでから、「マスカレード・ホテル」を読んだら違ったかもしれないと思ったりもします。
『光の帝国 常野物語』 恩田陸ー短編集だからこそ出せる恩田陸ワールド集
#大衆小説 #現在 #日本 #常野一族 #不思議な力 #短編集 #恩田陸ワールド #ファンタジー
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10月7日の一冊
不可思議な面白さが好きな方
恩田陸ってどんな作家か知りたい方
恩田陸は好きで、好きな話がいっぱいあるけど、読み直す時間はあまりない方
に贈りたいと思います。
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*短編一覧
大きな引き出し
二つの茶碗
達磨山への道
オセロ・ゲーム
手紙
光の帝国
歴史の時間
草取り
黒い塔
国道を降りて・・・
*あらすじ(ネタバレなし)
常野という特殊な能力をもった一族のそれぞれ異なるキャラクター(一部重複する部分もある)の全10編の短編集。「常野」には、常に野にあれ、という意味があるそうです。
恩田陸作品の中でも極めて初期の作品です。
作者のあとかぎで
その都度違うキャラクターでという浅はかな思い付きを実行したために、手持ちのカードを使いまくる総力戦になってしまった
と記されていました。
恩田陸作品は、覚えていないものもありますが、一通り読んだ一読者としても納得。
草取りは、「消滅」に似ているし、「国道を降りて…」は、直木賞作品「蜜蜂と遠雷」へと流れていく系譜だと思いました。後の長編のエッセンスがつまっているような短編集。
春田一家の連作にしてもよかったという「大きな引き出し」や
独立した長編で考えられていたという「オセロ・ゲーム」や「光の帝国」、
4人の少女の神隠しの話のプロローグとなるエピソードとして予定していたという「達磨山への道」
少女たちが神隠しにあうまでの話や、拝島瑛子が夫を取り戻す話、光紀や亜希子が大きな仕事をやりとげる話
は、別の機会にかいてみたいとあとがきで作者が記していたので、
常野シリーズの、残り2作品も読み直してみようと思います。
https://books.shueisha.co.jp/search/search.html?seriesid=47145&order=1
初期の、はかなげで危ない少年、少女の話もいいけど、どこか不思議な力をもっている人物たちの話というのも面白いと改めて思いました。
「光の帝国」は、悲しい話ではあるけど、ラストの「国道を降りて…」で救われているし、短編だから出せる物語の断絶と連続だと思います。
恩田陸ワールドの不可思議さが前面に出ているのは、「大きな引き出し」、「二つの茶碗」、「達磨山への道」の前3編かなと思います。
この短編集を読むと、やはり、管理人は、恩田陸が好きだとまざまざと感じました。この機会に、恩田陸作品を読み直していこうと思います(ああ、積読リストがまた増える…。)
⇩過去に紹介した恩田陸作品
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「ヴァチカン図書館の裏蔵書〔1〕」 篠原美季ー小休止。
#ライト小説 #新潮文庫nex #現在 #ヴァチカン #留学 #日本人とイタリア人のハーフ #男性 #図書館 #殺人 #誘拐 #ミステリー #キリスト教 #軽め
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10月6日の一冊
本はさらっとよんで後腐れがない方がいい方
街並み、場所、風景の描写はそこまでいらない方
起承転結は明瞭な方がいい方
に贈りたいと思います。
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ヴァチカン図書館の裏蔵書〔1〕 篠原美季 新潮文庫nex p269
*あらすじ
教授の依頼でヴァチカン秘密記録保管所を訪れ、幻の資料を探す聖人。その頃、ドイツとオーストリアで魔女狩りを彷彿とさせる猟奇殺人が起こる。図書館の膨大な蔵書に事件の謎を解く鍵があるとみた聖人と神父のマリクは…。
重たい純文学のあとは、軽めの一冊を読みたくなってとった一冊。
比喩の描写等に違和感を覚えたりすることもありましたが、起承転結のはっきりした話で嫌いではないかなという印象。
さらさら、さくさくっと読めてしまう感じで本当に楽でした。拷問?の描写だけがなんともリアルで、そこが少し怖いかな。
アニメ受けするような気がしたけど、宗教を扱い、作者も巻末の参照文献に複数の書籍をあげていたので、史実に基づいていることを考えると映像化は難しいのかな。
マリク神父とか、受けいいと思うんだけどなぁ。
ヴァチカンは行ったことがないので、街並みや、下宿しているアパートの描写がもっとあれば想像力が掻き立てられて楽しかったかなとは思いました。
シリーズもののようなので、続きも読んでみようかなと思います。
内容も軽めだったので、感想おすすめも軽めですが、小休止的な意味でいいかなと思います。
「カブールの園」宮内悠介-嗜好の対象とは。
#純文学 #芥川賞作品候補 #現在 #アメリカ #日系3世の女性 #いじめ #苦悩 #母と娘 #リミックス #姉と弟 #父親のいない中で #生きるとは
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10月3日の一冊
- 本はさらっとよんで芸術性を味わいたい方
- とりあえず読み進めることは内容にかかわらず、苦ではない方
- 物語のあらすじに期待しすぎない方
に贈りたいと思います。
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しばらく更新が途絶えてしまっていて、すみません。
家業が忙しくて、ばたばたしておりました。
本自体は読めていたものの、消化に困るものが多かったもので、、
本作は、贈る方がざっくりしてしまっています。これでは、届けたい方に届かないかもしれなので、他の純文学作品を読了後、追記したいと思います。
消化に大変困った作品より、
「カブールの園」宮内悠介 文藝春秋
あらすじ
シリコンバレーで起業した30代後半、日系3世の女性レイ。
80年代アメリカの小学校時代に周囲から受けた壮絶ないじめの後遺症を今も抱えながら、黒人の同僚とコンビで自社製品のプレゼンに駆り出される日々を送る。
精神安定剤を手放せないレイは、大仕事を前に休暇を命じられ、旅に出る。
日系1世の祖父母が戦中に入れられたマンザナー強制収容所、レイの母がひとり暮らすリトル・トーキョー。自らのルーツを歩いたレイは、目を背けていた本心・苦しみの源泉を知った。
複雑な形で差別の問題が日常にある3世の苦しみ、母親との関係。
日本とは、日本人とは、私とは何か――。
VRや音楽のミキシングアプリを対比させ、問題を鮮やかに巧みに
浮かび上がらせる。「マイノリティとしての私たちのこと」を問いかけた傑作。
第30回三島賞受賞。芥川賞候補。
「一読者として非常に感銘を受けた」平野啓一郎(選考委員)
様々な人種が暮らし、薬物の誘惑も幼児虐待も当たり前に転がるニューヨークで、女子プロレスラーとして働く姉の稼ぎで小学校時代を送った。やがて当たり前のように、一つの悲劇が起こる――日本人青年が、かつての生活を振り返る「半地下」も収録。
解説・鴻巣友季子
文春文庫『カブールの園』宮内悠介 | 文庫 - 文藝春秋BOOKSより
*純文学初心者の感想
読めない、、、難しい。なぜ、本作が読売新聞の読書紹介のよみうり堂([現代×文芸 名著60]生命を感じる<59><60> : 特集 : 本よみうり堂 : エンタメ・文化 : ニュース : 読売新聞オンライン)に紹介されてるのか、、、
どこを楽しめばいいのか、、、。リカイデキナイ。デキテナイ。
*そもそも
純文学ってなんですか?
純文学(じゅんぶんがく)は、大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説を総称する、日本文学における用語。
この定義づけからすると、純文学を楽しむに当たっては、娯楽性よりも芸術性に目を向けるべきなのかもしれないということがわかります。
しかし、本書を読んでいると、場面転換がなされているが、それを指示する描写や表記がない。
読めない、と思った理由の多くはこの点にあります。
これを無理やり楽しんでみるなら、
主人公レイの過去と現在の思考の交差を混然とした表記にすることで示しているのではとも思えます。これを芸術性と呼ぶのであれば、確かに、表題作の中編「カブールの園」は、芸術性が認められるのかなとも思いました。
また、「カブールの園」のテーマは、母と娘の葛藤、日系3世の苦悩にあります。
個人的には、このテーマを十二分に掘り下げてほしかった。日本に住み、日本語を母国語とする日本人に触れる機会が多い、私のような読者からすれば、葛藤にしろ、苦悩にしろ、もう少し描写がほしかった。
後に、調べたところ、本書は芥川賞の候補作品にもなっており、本作品への書評でも、同様の指摘がなされており、驚きました。
選考委員の方が指摘するほどに、テーマとしてはとても興味深いものを扱っていると思います。
また、描写については、とても秀逸な点があり、
日系人ではなく、日本人の目になっている
この描写だけで、アメリカ社会で、成功を収めていかなければならない主人公レイが抱える、日系3世ではあるものの、アメリカ人であらねばならないことへの焦りを強く感じました。どう違うのかの情景は浮かばないけれど、この一文だけでハッとさせられるには十分。
もしかしたら、人種のサラダボウルといわれるアメリカ在住していたことのある、作者ならではの表現なのかなと思いました。
後半の中編「半地下」ででてくる、温度で青から、緑、そして茶色に変わるティラノサウルスがついた手袋は、この作品の最後が、最初からの予感通り、楽しいことにはならないことをしめしている気がしました。何気ない表現でしたが、とても印象に残り、ひっかかりを感じました。
いろいろ考えてみたけれど、
純文学は、さくっと読めないのではないか。
そのうえで、自分というフィルターを通して、何が印象、心証あるいは感性のようなものに何が残るかを見定めるべきなのではないのか。
とりあえずは、他の純文学作品も読み、自分なりの網を通して、作品を楽しんでみようと思います。
「昨日がなければ明日もない」宮部みゆきー面白さに読後感はいれるべきなのか
#ある意味推理小説 #現在 #独身(離婚した)男 #私立探偵 #元逆玉婚 #相談から事件に発展 #杉村三郎シリーズ 第5弾
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9月21日の一冊
- 主人公は穏やかな人柄の私立探偵がよい方
- 地域やご近所さんとのつながりがある話がよい方
- 読後感がすこぶる悪しでも耐えられる方(第一編に関しては特に)
- それでも、ミステリーすぎないミステリーに現実でもあり得るかなと思える程度で関わる主人公がよい方
に贈りたいと思います。
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「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき 文藝春秋 p396 単行本
杉村三郎シリーズ第4弾、希望荘の紹介記事はこちら⇩
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以下の中編3編よりなる私立探偵となった杉村三郎氏を描いた作品。
『希望荘』以来2年ぶりの杉村三郎シリーズ第5弾となります。中篇3本を収録する本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザーを相手に、杉村が奮闘します。 収録作品――あらすじ―― 「絶対零度」……杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院ししてしまい、1ヵ月以上も面会ができないままで、メールも繋がらないのだという。杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるが……。 「華燭」……杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する……。 「昨日がなければ明日もない」……事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。「子供の命がかかっている」問題だという。美姫は16歳で最初の子(女の子)を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な女性であった……。
引用元サイト:『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
上記引用サイトにのっている、宮部みゆきとの対談((5ページ目)宮部みゆき 『昨日がなければ明日もない』&『希望荘』刊行記念インタビュー #2 シリーズ累計300万部突破! | インタビューほか - 文藝春秋BOOKS)の中でインタビュアーが触れるように、絶対零度はかつてないほどの後味の悪さでした。希望荘の雰囲気が続くと思っていたら、出だしからフライパンで殴られた感じです。
気がめいっているときなどに読んでしまうと、本当にしんどくなりそうなくらい、、、。刊行時に施行されていた刑法にいう集団強姦罪がでてくるので、苦手な人は無理に読まない方がいいかもしれません。
なんで、作者がこんな作品を書いたんだろうと、思っていたのですが、対談を読んで、杉村氏が洞察力、観察眼に長けた探偵へと成長するためのステップなんですね、、、。にしても重たい。
あらすじ紹介はいつも自前でがんばるのですが、今回ばかりは無理と思ったので引用させていただきました。
本の面白さを説明するにあたって読後感をどこまで考慮するかは悩ましい問題です。
正直、絶対零度は、3編の中で一番、引き込まれました。読み終わるスピードも速かったと思います(買い物にいく予定を繰り下げて、読書に時間を割いたくらいに)
ただ、読み終わった後もしばらく動く気になれませんでした。登場人物の誰の心に寄り添っても、憎悪、怒り、あきれ、やりきれなさ、悲しみ、無力感、そういう感情しかわいてこない。
これはあまりに、毒気が強すぎたのかもしれません。
華燭は、この単行本の箸休め的な話なんだと思います。ただ、中学生の加奈ちゃんが、親戚関係がなかったといえ、叔母さんから結構ひどいセリフをはかれるシーンがあります。杉村氏は、いままで、自分の娘桃子ちゃんと散々重ねておきながら、一人の大人へのなぐさめとおなじようなセリフしかはかないことに、ちょっと当惑。男親だからなのか、口下手なのかもしれませんが、やっぱり鈍感なんだなと思わずにはいられませんでした。中学生の女の子が人生であびた毒気なんて、まだ、ほんの少しで、ティーンだなんでいっても、小学生にちょっと毛のはえた程度なのでは、とやはり少し疑問です。(登場人物の言動に感情が動かされている時点でかなりこの話に引き込まれてしまっている証なのですが、、、)
昨日がなければ明日もないは、本の表題ともなった話です。美姫の娘、漣の毒気、横暴なふるまいのようなものが伝聞でしかでてこないのが、最初は、母親に比べれば大したことないということなのかとも思いました。しかし、裏を返せば、杉村氏のような自分にはかなわない大人の男の人には、小さく丸まり、元義理のお父さんのように自分に引け目を感じ、また、すがれば構ってもらえる相手には、ねばちっこく接するあたりが母親そっくりなのかなとも思いました。三紀のような姉をもった、妹はどうするのが、正解だったんでしょうか。やはりラストがやるせないですー。
最後に、そろそろこのブログも、なんとか更新が続けられ、紹介冊数が増えてきました。また、ありがたいことに累計閲覧者数も100人を超えました。管理人は、これからもこのブログを通じて、みなさんにほしい一冊を届けるべく、更新を続けるつもりです。これからも引き続きよろしくお願いいたします。
ただ、一日一冊を紹介するだけでなくできれば、好みがこういう人はこの本が好きというのをわかりやすくするために、複数人の対談形式で、2週間に1度くらいまとめを作ろうかと思っています。
対談メンバーは、本の好みが完全に分かれている私の知り合いに協力してもらうつもりです。
お楽しみに!
「あの家に暮らす四人の女」三浦しをんー反対色ブラックとレモネード
#現在 #東京近辺 #母と娘 #娘の友人 #同僚 #4人の女の同居 #同居生活で生じるあれこれ #ハプニング #まあまあ長編
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9月20日の一冊
結婚していない女性たち(離婚も含む)共同生活がよみたい方
ただの共同生活じゃつまらない方(つまり、トラブルやハプニングも生じる)
人と人との関係性、距離感は作りこまれた話がよみたい方
家族以外の近しい人との関係の話がよみたい方
に贈りたいと思います。
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「あの家に暮らす四人の女」三浦しをん 中央公論新社 p341 文庫本
謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。いつしか重なりあう、生者と死者の声-古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。ざんねんな女たちの、現代版「細雪」。
東京杉並の古い洋館で、刺繡作家の牧田佐知と気ままな母・鶴代、佐知の友人で毒舌な谷山雪乃と雪乃の後輩でダメ男に甘い上野多美恵の4人が暮らす。同じ敷地内には、長年好き続ける謎の老人・山田一郎が暮らしている。
多美恵がらみのトラブル、佐知の恋の訪れ、洋館なる“開かずの間”を開けて中からでてきた、、、ものとは、、、。
あらすじを平べったく記すと上のようになる上、間違ってはいないのだけど、もう少しおどけた要素も多分に含んでいる作品。テレビ東京でドラマ化もされました。
いきなり、死者の声が話し始めた時は衝撃でした。コメディ色も後半につれ、加速していった感じがします。
トラブル、話題、笑いには事欠かない物語のはずなのに、設定から話を推測して、勝手にお上品なお話を想像していたため、あまりに世俗すぎて、勝手に期待外れ感を抱いてしまった。
個人的には、コメディなのか、人情話なのか、色の峻別がごたごたで、反対色を混ぜてできた黒色のような感じがしました。それくらい物語に振り回されたい人にはいいかもしれません。
ここまでお読みの方はお気づきかもしれませんが、管理人にはどうもマッチしなかった本でした。変な推測せずに読んでいれば、、、うーん。
ただ、ラストの雪乃と佐知の関係は、こんな友人が人生にいてくれば、心強いし、心安らぐだろうなと思いました。“親しい友人“とラベリングしたとしても、友人たちにはそれぞれの生活や家庭がある以上、この物語のようにはいかないもの。夢をみせてくれたラストは、レモネードのような、なんともいえない、すがすがしささえ感じました。
2020/09/19の一冊 「約束の海」山崎豊子ー未完の完結
#大河小説 #平成初期 #自衛隊の潜水艦 #自衛隊基地 #自衛官 #潜水艦乗組員 #衝突事故 #戦争とは #平和とは #未完の完結
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9月19日の一冊
- 海上自衛隊、潜水艦に興味のある方
- 平成初期ってこの空気だったよねと思いたい方
- 上司と部下、同期の濃い人間関係が読みたい方
- もどかしいけど素敵な恋が読みたい方
- 責任、仕事、戦争、平和について考えたい方
に贈りたいと思います。
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「約束の海」 山崎 豊子 新潮社 p436
海上自衛隊の潜水艦と釣り船が衝突。若き乗組員・花巻朔太郎二尉は苛酷な試練に直面する。その父は昭和16年、真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となって-。時代に翻弄され、時代に抗う、父子100年の物語が、いま始まる。
本の紹介文が、始まるで、終わっているからといって、まさか、始まったまま終わるとは思わず、最後のページを何度もめくってしまった本です。
未完だと知っていると読まなかったのかもと思うと、複雑な気持ちもしましたが、未完であることを知り、読むのをやめようと思ったそこのあなたにこそ、読んでほしい一冊です。
この作品が未完なのは、作者山崎豊子氏の遺作であるためです。作者自身、病床で完成しないことが、わかりながら、したためた作品であることを知ると、読了後に、そこまでして伝えたかったメッセージは何なのだろうと考えずにはいられません。
読み終わった本があると、言うと、その本を通して、作者は何が言いたかったの?
と、きかれることがありますが、小説は特にですが、必ずしもメッセージ性が必要であるとは思わないので、私は、作者のメッセージや意図を考えることは普段はあまりありません。作者のメッセージがあるとして、それを登場人物が言語化して伝えてくるのは、正直、押し付けられているとも思うので、個人的にはあまり好きではありません。
登場人物が苦悶したり、反発をおぼえたりするような出来事の中にメッセージがあり、それに対して自分が思うことがある場合には、メッセージを受取ったなと思うことがあります。
抽象的で本ブログの読者の方にどこまで伝わっているか不安ではありますが、本作品は、上記のまれに受け取るメッセージが伝わってくる作品だと思います。
作者が身まかられている以上、未完であるが完結ではあるので、先ないことであるのは承知で、本当に続きが読みたかったです。心より、お悔やみ申し上げます。
また、登場人物の性格個性も様々で、複雑で、とてもリアルです。恋愛要素もありますが、ふわふわと宙に浮いたような恋愛ではなく、朔太郎の恋の相手がしっかりしている人物なので、とても好感がもてました。
本をお勧めするというのでは、これで十分なような気がしますが、後日、もう一度読み込み、ネタバレありの感想としても記してみたい一作です。