タリアから、あなたに贈る1冊

余りに、活字中毒過ぎて、読もうとした本が昔読んだことがあるということがしばしばあることから、備忘録をつけたいと思ったのがきっかけ。 ただ、ああ、この本にもう少し早く出会えていればと思ったことも多かったので、この時期のあなたにはおすすめしたい、過去の、未来の私に代わる誰かへの紹介も込めて。 そして、忙しく精神的につらかったときに、刺激の強い本を読めるタイミングがなく、その時の自分でも読める本が欲しかった。でも、そんな都合のいい情報にはなかなか出会えず。 そんな、少し前の私のような、いまにもあふれそうな水盆を

MENU

2020.0915 「希望荘」 宮部みゆきー短編集だけど、読了後ずっしりきます。

#杉村三郎シリーズ #私立探偵 #穏やかな人 #男やもめ

 

2020.09.15 「希望荘」 宮部みゆき 小学館 単行本 465p

 

希望荘

希望荘

 

 

族と仕事を失った杉村三郎は、東京都北区に私立探偵事務所を開業した。ある日、亡き父が残した「人を殺した」という告白を調査してほしいとの依頼があり…。表題作ほか全4編を収録。『STORY BOX』掲載等を書籍化。文庫本化もされている。

 

希望荘 (文春文庫)

希望荘 (文春文庫)

 

 ドラマ化もされた杉村三郎シリーズの“その後”を描いた、聖域、希望荘、砂男、二重身の4編からなる短編集。
杉村三郎シリーズの紹介は下の関連本参照。

 

ラマは、小泉孝太郎主演だった。個人的には、役者が、杉村氏になりきったというより、役者のそもそもの雰囲気が、杉村氏に似ているのではないかと思った。要するに、はまり役で、おもしろかったので、前作を読むのが、、、という方は、ドラマを見てもいいかもしれない。

 

部みゆき作品には、作者自身が不動産業で働いていた経験があることもあり、不動産の話がよくでるような気がする。聖域や、希望荘にも不動産屋に尋ね人の以前の住居を訪ねるシーンが登場する。

 

ずれも杉村氏のところに舞いこんだ依頼を解決していく話。ティーンエージャーがたびたび絡んでくるあたりが、作者らしさを感じる。


聖域は、離れて暮らしていた父親が死に、生前の父の過去を探ってほしいとの依頼を紐解いていく。希望荘は、自殺し、失踪したと思っていた希望荘の老婦の幽霊を見たというところから、老婦の行方を捜していく。

前半二編は、ひねりはきいており、はっとさせられる場面もあるが、私立探偵がおそらく行うであろう、身辺調査や、尋ね人探しであり、想像の範疇ともいえる。

 

かし、後半二編は、ミステリー小説ばりの展開になる。
特に、砂男は、重い。
周りの誰かを思い行動する、「善人」の話ともいえる聖域の後に、不可思議な面のある「希望荘」、その後に、これは、読了後、正直重いと思った。
もう一度読み返したいけど、予想だにしなかった展開と、杉村氏のやるせなさ、誰も救われないという思いが、じんわりと広がり、戻る事もできなかった。

仕方ないと思い、ラストの短編、二重身にすすむ。
やるせない感は、砂男も同じであるのに、やはり、3作品目が重すぎ、どこか、ぼおっと終わってしまった。

 

者も、穏やかな私立探偵をどこかで描きたかったといっていたのをきいたことがある。確かに、どこかお坊ちゃん然とした空気のある杉村氏が、探偵を稼業とするとこうなるのかなという、展開。


れにしても、やはり事件が好き、というか、事件をひきつけるというか、事件に巻き込まれに行くのは相変わらずで、懲りてないんだな、と苦笑してしまう。

杉村三郎シリーズの最新刊、「昨日がなければ明日もない」もぜひとも読みたいところ。

 

=======================================
9月15日の一冊「希望荘」は、


 私立探偵小説が読みたく、穏やかで、人情味もある、話が読みたい方
 読後感が、ずっしり来るものが詠みたい方(4編読まれると読後感がずっしりきます。)
                          に贈ります。

                                  タリアより
=======================================