2020/9/18の一冊 「ミッキーマウスの憂鬱」
#エンタメ小説 #現在 #千葉県にある某巨大テーマパーク #契約社員くん #働き始めてからの3日間 #美装部
#短編集ではないけど、長くはない
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9月18日の一冊
- 千葉にある某テーマパークの裏側をフィクションでよいのでのぞいてみたい
- 某テーマパークに行ったことがない、行けてないが行ったような気分に浸りたい
- 言いたいことを最後に行ってくれる登場人物がいてスカッとして読み終わりたい
- 起承転結が簡明な話が好きな
方に贈りたいと思います。
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「ミッキーマウスの憂鬱」松岡 圭祐 新潮社 p251 単行本
友情、トラブル、純愛…。様々な出来事を通じ、やがて裏方の意義や誇りに目覚めていく。秘密のベールに包まれた巨大テーマパークの「バックステージ」で働く人びとの3日間を描くディズニーランド青春小説。書下ろし。
タイトルだけはきいたことがあるという方も結構いるのではないでしょうか。
私もその一人だったので、どんな話なのだろうと思いながら、本当にまさかでディズニーランドの話とは思わず、びっくりしました。
松岡氏は、作家以前は、催眠術師として活動されていたそうで、心理学的技法を本の執筆に際しても参考にされているのではないかと思いました。
最初は、主人公後藤君の前のめり、ダダ滑り感が痛々しく、この話はどうなるんだろうと不安さえも覚えました。ですが、話のドタバタ感と、マニュアルなんて関係ない!!という熱量は、後藤君の性格あってこそなので、安心して読み進めてほしいです。
後藤君のディズニーランドのバックヤードは、夢の裏側でも、きっと夢の世界が広がっているんだろうという期待もわからなくはないけど、現実はそんなに甘くないとも思いつつ、後藤君が戸惑い、なじめず、困惑し始めるところからは共感できます。
そこの共感にのってしまえば、あとは一想いに読み進められるかと思います。ページ数に対して、単行本では余白も大きいので、すぐに読み切れると思います。
後藤君の考えとは対称的に醒めた考えをしてしまったとしても、おそらく大丈夫です。最後には、私は一応ですが、解消されました。よくできてるなぁと感心した、ラストの迎え方でした。日本人は好きそうなラスト。(読んで、確かめてみてください)
本の説明では、純愛とありますが、そこまで、純愛なのかは少し疑問です。恋の芽生えくらいなのではないかなとも思うので、青春、の方が的確かなと思います。
コロナで、おでかけが思うようにはできない時期だとおもうので、こういう話は、抑圧感、憂鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれると思います。読後感は、個人的には、後藤君の考えに全面賛成ではなかったですが、おおむねスカッとして、後腐れはなかったです
9月17日の一冊 「最悪の将軍」朝井まかてー民を思う心とは
#時代小説 #江戸時代 #江戸 #徳川綱吉 #将軍在位前から死去まで #将軍職
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9月17日の一冊
- 伝わらにもどかしさに共感したい方
- 機智に富んだ会話が聞きたい方
- 人と人との関係性を、会話から描く小説が好きな方
- 時代小説ははじめての方(日本史知ってると先が予想できると思いますが、それはそれでおもしろかったです。)
に贈りたいと思います。
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生類憐れみの令により、犬公方とも呼ばれた五代将軍・徳川綱吉。一方では、江戸幕府の礎となる文治政治を推し進めた名君ともいわれている。その知られざる劇的な生涯を描いた傑作長編。『小説すばる』掲載を加筆・修正。
朝井まかてさんの本は初めて手に取ったが、人と人の会話から、その人の関係性を描き、それに対する登場人物の見方の描写がすごくわかりやすかったです。他の本も読んでみようと思います。
人も年月を経ると、よくも悪くも変わるものであること、命はなんとはかないのかとも思わされる作品。
特に主人公、綱吉の内心の変化は、将軍、公方となったことが、重圧として綱吉をむしばみ、判断力、体力を奪っていくのは読み進めていて、痛々しいほど。
明晰かつ鋭敏な主君でありつづけることの難しさが随所に記されています。
(本作は、綱吉の将軍就任前から、死去までを描いた、史料にのっとり、作成された時代小説なので、内容にもふれます。)
作中で、将軍に就任してから、数年のうちに、側近堀田正俊を、美濃青野藩主稲葉氏が殺害される。そして、綱吉は、稲葉氏がなぜ、そのような所業に及んだかを聞けず、その場で殺害したことに憤りを感じている。
堀田氏の死去は、綱吉に幾度となく堀田が生きていればとの思いを抱かせることとなり、綱吉をむしばむ。
しかし、死去の数年前に、生じた浅野内匠頭(あさの たくみのかみ)による吉良上野介(きらこうずけのすけ)への刀傷事件では、ただ激怒し、不名誉な形での切腹を浅野氏に申し渡します。
自身がかつては、いわば加害者側の言い分をききたいと考え、聞く機会を失うような、家臣による加害者のその場での殺害を、嫌悪していたにもかかわらず、死去の数年前には、浅野氏が乱心であるとの報告を受けるだけで、理由を聞こうともしない。
個人的には、人というのはこうも変わってしまうのかと、少しおそろしくなりました。
一方、妻信子との会話や、やり取りは機智に富んでおり、とてもおもしろかったです。夫婦が互いを思いやる様は、とても仲睦まじいと感じました。願わくば、信子もそう思っていたように、二人の時間をもう少し、与えてあげたかったです。
そして、時代小説は、読んだことがないわけではないのですが、ここまで史実にのっとりながら、描きながらも、小説として、興味深く、面白いのは、作者の技を感じました。
時代小説をそんなに読んだことのない方でもよみやすいのではないでしょうか。
2020.09.16 「営繕かるかや怪異譚 その弐」ー不可思議な怖さ
#小野不由美 #営繕かるかやシリーズ #不可思議で恐ろしい #晩夏っぽい
「営繕かるかや怪異譚 その弐」 小野不由美 角川書店 単行本 p322
*あらすじ
事故で死んでしまった三毛猫の小春。ある時息子が裏の空き家から小春の声がするといい…。「まつとし聞かば」など、住居にまつわる怪異を営繕屋・尾端が鮮やかに修繕する全6篇を収録。『幽』『怪と幽』掲載を改稿し単行本化。
短編一覧
芙蓉忌 関守 まつとし聞かば 魂やどりて 水の声 まさくに
短編集が好きなわけではないけど、自分が仕事に、忙殺されていた時期の本棚は短編集が多いです。意図して購入したわけではないと思うけど、結末が早く知りたかったのかな。
営繕やさんシリーズ第2弾。今回は、営繕やさんが、壱と異なり、そこまで前面にはでてこなかった印象です。
⇩壱はこちら
本書を読んで、一番ひやひやしたのは、魂やどりて。
この編の、主人公育の、古家リフォームが、道具を使うべき方法で使わずに、他の場所に使うというのが、なんとも、罰当たりな気がしてひやひや。それが災厄を呼ぶ結果に…。
同じ長屋の住人の、面倒見のよさが救いです。
怖さがなんとなく、よくわかると思ったのは、関守。
幼少期、学校裏に本当に小さな神社があって、そこのお稲荷さんの前を、夕方通るのが怖かったのを思い出しました。茜色のおいなりさんが、昼間より、目がつりあがってみえて、何となく怖い。
それと似たような感覚がしました。早く帰れ、そういわれているような気持ち。
小野不由美さんは、このタイプの不可思議な怖さを描き出すのが味わいの作家さんだと思います。(「屍鬼」は、普通に怖いと思いますが、)
小説の技法を確立して、承継することにも熱心だとお聞きしたことがあり、それも興味深いです。
真夏より、晩夏、あるいは初秋くらいの雰囲気のある、すこし怖い、そして、ちょっと不可思議な短編集です
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9月16日の一冊は、
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ちょっと怖いけど、怖すぎない話がよみたい方
- 終りが早めに知りたい方
- 怖さでいうと不可思議な怖さが味わいたい方に
タリアより
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2020.0915 「希望荘」 宮部みゆきー短編集だけど、読了後ずっしりきます。
#杉村三郎シリーズ #私立探偵 #穏やかな人 #男やもめ
2020.09.15 「希望荘」 宮部みゆき 小学館 単行本 465p
家族と仕事を失った杉村三郎は、東京都北区に私立探偵事務所を開業した。ある日、亡き父が残した「人を殺した」という告白を調査してほしいとの依頼があり…。表題作ほか全4編を収録。『STORY BOX』掲載等を書籍化。文庫本化もされている。
ドラマ化もされた杉村三郎シリーズの“その後”を描いた、聖域、希望荘、砂男、二重身の4編からなる短編集。
杉村三郎シリーズの紹介は下の関連本参照。
ドラマは、小泉孝太郎主演だった。個人的には、役者が、杉村氏になりきったというより、役者のそもそもの雰囲気が、杉村氏に似ているのではないかと思った。要するに、はまり役で、おもしろかったので、前作を読むのが、、、という方は、ドラマを見てもいいかもしれない。
宮部みゆき作品には、作者自身が不動産業で働いていた経験があることもあり、不動産の話がよくでるような気がする。聖域や、希望荘にも不動産屋に尋ね人の以前の住居を訪ねるシーンが登場する。
いずれも杉村氏のところに舞いこんだ依頼を解決していく話。ティーンエージャーがたびたび絡んでくるあたりが、作者らしさを感じる。
聖域は、離れて暮らしていた父親が死に、生前の父の過去を探ってほしいとの依頼を紐解いていく。希望荘は、自殺し、失踪したと思っていた希望荘の老婦の幽霊を見たというところから、老婦の行方を捜していく。
前半二編は、ひねりはきいており、はっとさせられる場面もあるが、私立探偵がおそらく行うであろう、身辺調査や、尋ね人探しであり、想像の範疇ともいえる。
しかし、後半二編は、ミステリー小説ばりの展開になる。
特に、砂男は、重い。
周りの誰かを思い行動する、「善人」の話ともいえる聖域の後に、不可思議な面のある「希望荘」、その後に、これは、読了後、正直重いと思った。
もう一度読み返したいけど、予想だにしなかった展開と、杉村氏のやるせなさ、誰も救われないという思いが、じんわりと広がり、戻る事もできなかった。
仕方ないと思い、ラストの短編、二重身にすすむ。
やるせない感は、砂男も同じであるのに、やはり、3作品目が重すぎ、どこか、ぼおっと終わってしまった。
作者も、穏やかな私立探偵をどこかで描きたかったといっていたのをきいたことがある。確かに、どこかお坊ちゃん然とした空気のある杉村氏が、探偵を稼業とするとこうなるのかなという、展開。
それにしても、やはり事件が好き、というか、事件をひきつけるというか、事件に巻き込まれに行くのは相変わらずで、懲りてないんだな、と苦笑してしまう。
杉村三郎シリーズの最新刊、「昨日がなければ明日もない」もぜひとも読みたいところ。
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9月15日の一冊「希望荘」は、
私立探偵小説が読みたく、穏やかで、人情味もある、話が読みたい方
読後感が、ずっしり来るものが詠みたい方(4編読まれると読後感がずっしりきます。)
に贈ります。
タリアより
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2020.09.14「祝祭と予感」ー恩田陸作品がお中元のように詰め込まれてる
「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編小説集。ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」など、全6編を収録する。『小説幻冬』ほか掲載を単行本化
私の読書にはまったきかっけは恩田陸に出会ったことからはじまったといっても過言ではない。彼女が世に出した作品はすべて読んできたし、読まずにはいられなかった。
彼女が生み出す作品の中の登場人物は、魅力的で、近寄りがたく、あこがれを抱いていつも読んでいた。
その作者が、直木賞を受賞した「蜜蜂と遠雷」のその後、あるいはその前を描いた、短編集。
読み終わった感想(ネタバレはなし)は、ああ、恩田陸が詰め込まれている。恩田陸という作家が書いた作品だなとわかる要素がちりばめられていて。バラバラ感のない、お中元のように収まっている作品だと思います。
直木賞作品は読みやすい内容の作品が多いが、「蜜蜂と遠雷」はページ数がとても多いので、読むか迷われる方は、この短編集から思い切って読んでしまうのもいいと思う。「蜜蜂と遠雷」のラストがわかってしまうので、第一編は飛ばすのも悪くはない。
個人的に印象に残ったのは、内容という意味では、「獅子と芍薬」「袈裟と鞦韆」。
恩田陸という作家が描き出す、かつての私も、今もひかれる人物像がはっきり出ているのは、「竪琴と葦笛」。
作者の技巧にうならされたのは、「鈴蘭と階段」。
特に、「鈴蘭と階段」は、行間(字義通り)が、鮮烈な印象を読み手に与えている。
奏が自分が演奏の供とするヴィオラに悩んでいるところから、物語は始まる。作中では、しっくりあうヴィオラ、そして弓の組み合わせが、チゲ鍋の具、チゲ、出汁の組み合わせに例えられている。チゲ鍋のお手軽さ、材料費のお財布に優しい感じが、彼女のキャラクターをより身近に、そして、あるいは、悩みの奥深さをわかりやすく伝えていた。
関連本としては、
をあげておきます。
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9月14日の一冊「祝祭と予感」は、
9月13日の1冊 「ドミノin上海」 恩田陸
#主人公?登場人物複数 #複雑に交差するストーリー #途中で負えなくなる笑
#上海
9月13日の1冊 「ドミノin上海」 恩田陸 KADOKAWA 単行本
ドミノを読んだのは10年前とかなので、すっかりこの形式の本がご無沙汰だったので、初読のような衝撃を受けました。
恩田陸は、新刊出たら、すぐ読む!というくらい好きな作家です。しかし、ここ数年忙しく負えていませんでした。なので、割と新しめの書籍を読破するべく、計画中です。
今回は、他の積読との関係で、図書館で借りました。予約で3番目くらいだったかな。
*あらすじ
舞台は上海。日本から観光にきていた保険代理店勤務の女性たち、上海で寿司のデリバリーサービスを始めて男性、上海を舞台に映画を撮影するべく来中していた撮影クルーの一団、その監督のペットのイグアナ、上海動物園のパンダ、とその飼育員、現代アートのバイヤーと製作者の、21名と3匹が絡みあう疾走感満載のドタバタ・コメディー。
*感想 voice ネタばれなし
あれ、この人だれだっけ、となること前半は多いです。なので、長いけど、ああ、この話の中心の謎は、これなんだ、とわかるまでは思い切って、半分くらいまで読んでしまった方が楽だと思います。
わかってからは、本当にドミノ倒しのように続きを読む手がとまらなくなること間違いまし。
没頭してよみたいときに、おすすめの一冊。
上海行ったことあればなぁ。もっと楽しめたんだろうなあと、少し悔しいです。
*おすすめする人
→思いっきり本に没頭したい人。
→まとまった時間(1時間半くらい)を今週中に取れる人。つまり、今日夜更かししても大丈夫という日が1日くらいある人
→登場人物複数って、どうなるの???と興味がわいている人。
*関連おすすめ本
「ドミノ」 恩田陸 角川文庫
2020.9.12 「草花たちの静かな誓い」 宮本輝
9月12日の一冊 優しく静かなミステリーがよみたいあなたへ
#ミステリー #舞台はアメリカ #主人公は日本人 #ナツイチ 2020
仕事でなんばに行ったときに、本屋でみつけ、購入した一冊。
新潮文庫の夏の100文庫フェアの一冊だったよう。
本を選ぶときは、基本は、作者で選んでいるので、どうしても同じ作者の本ばかり読んでしまう傾向にある。本好きな人あるあるでは。
宮本輝作品は一度読んでみたいと思いながら手が出せずにいた作家の一人。
文庫本のよいところは、絶妙な加減のあらすじが、裏表紙に紹介されていること。
ネタばれにならない程度の、説明書きがある。
本選びに書店で、迷われたときは、文庫本は、書店のpopなどで目ぼしい本を選び、裏表紙でおおまかな内容を確認するとよいかも。
*あらすじ
本書は、主人公弦矢が、亡き叔母から莫大な遺産を相続することになったところから始まる。叔母の娘レイラは27年前に死んだと聞かされていたが、レイラはスーパーマーケットで誘拐され、行方不明になっていた。弦矢は、彼女の行方を探し始める―。
*感想 voice ネタばれなし
ただしさとは何か。あるべき姿とは何かを、レイラの失踪の謎を追う中で考えさせられる作品。
作品の中にたびたび登場する叔母菊枝の庭や、町の描写があまりに美しく、そして、はかなく、目の中に浮かび上がるよう。
作品の大筋と、絶妙にリンクするこれらの描写が、ラストにまで響いてくるのは、見事としかいいようのない作品でした。
こういう作品にふれるたびに、読書をするというのは、活字を追うだけではなく、自分の感性や想像力が受け取り方に大きく影響する要素だと感じます。活字が助けてくれる描写以上の情景は、読み手の今まで見聞きした情景で補われるのですから。リアル―本物―の景色をなるべく多く見、かつ、自分の中にとどめておきたいと改めて思いました。
タイトルを、読了後にあらためてみると、しーんと静かだけど、重く心に響いてきました。
*ネタばれあり 注意 読みたくない本を読まなくて済むように。
どうしても、ネタバレになるので、触れたくないが、このブログのコンセプトは、読みたくないものも読まないように、にも力点をおいているので、、、
小児性愛の描写があるので、フラッシュバックの危険があります。とお伝えしておきます。
そういう方は避けた方がよいです。