2020.09.14「祝祭と予感」ー恩田陸作品がお中元のように詰め込まれてる
「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編小説集。ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」など、全6編を収録する。『小説幻冬』ほか掲載を単行本化
私の読書にはまったきかっけは恩田陸に出会ったことからはじまったといっても過言ではない。彼女が世に出した作品はすべて読んできたし、読まずにはいられなかった。
彼女が生み出す作品の中の登場人物は、魅力的で、近寄りがたく、あこがれを抱いていつも読んでいた。
その作者が、直木賞を受賞した「蜜蜂と遠雷」のその後、あるいはその前を描いた、短編集。
読み終わった感想(ネタバレはなし)は、ああ、恩田陸が詰め込まれている。恩田陸という作家が書いた作品だなとわかる要素がちりばめられていて。バラバラ感のない、お中元のように収まっている作品だと思います。
直木賞作品は読みやすい内容の作品が多いが、「蜜蜂と遠雷」はページ数がとても多いので、読むか迷われる方は、この短編集から思い切って読んでしまうのもいいと思う。「蜜蜂と遠雷」のラストがわかってしまうので、第一編は飛ばすのも悪くはない。
個人的に印象に残ったのは、内容という意味では、「獅子と芍薬」「袈裟と鞦韆」。
恩田陸という作家が描き出す、かつての私も、今もひかれる人物像がはっきり出ているのは、「竪琴と葦笛」。
作者の技巧にうならされたのは、「鈴蘭と階段」。
特に、「鈴蘭と階段」は、行間(字義通り)が、鮮烈な印象を読み手に与えている。
奏が自分が演奏の供とするヴィオラに悩んでいるところから、物語は始まる。作中では、しっくりあうヴィオラ、そして弓の組み合わせが、チゲ鍋の具、チゲ、出汁の組み合わせに例えられている。チゲ鍋のお手軽さ、材料費のお財布に優しい感じが、彼女のキャラクターをより身近に、そして、あるいは、悩みの奥深さをわかりやすく伝えていた。
関連本としては、
をあげておきます。
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9月14日の一冊「祝祭と予感」は、