「クスノキの番人」 東野圭吾―読者へのもてなしのこころ。
#大衆小説 #現在 #日本 #神社の管理人 #疎遠だった叔母 #クスノキ #上流社会
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11月18日の一冊
少しだけ不思議な、それでも地に足がついた話が読みたい方
二重三重の謎が入っているのが好きな方
しっかりと読者をもてなしてくれる話が好きな方
に贈りたいと思います。
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「クスノキの番人」 東野圭吾 実業之日本社 p456 単行本
*あらすじ
その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。
その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語。
不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった玲斗。
同情を買おうと取調官に訴えるが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまった。そこへ突然弁護士が現れる。依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるというのだ。
依頼人に心当たりはないが、このままでは間違いなく刑務所だ。そこで賭けに出た玲斗は従うことに。
依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性が待っていた。千舟と名乗るその女性は驚くことに伯母でもあるというのだ。あまり褒められた生き方をせず、将来の展望もないと言う玲斗に彼女が命令をする。「あなたにしてもらいたいこと――それはクスノキの番人です」と。
『秘密』『時生』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く新たなエンターテインメント作品。長編書き下ろし。
*感想
東野圭吾の出版年の新しい、話題の作品です。
東野圭吾の本は15年くらい昔は男性作家の固い文体が好きになれず、話としては面白いけど、あんまり好きになれなかったのですが、この本を読んでイメージが変わりました。
面白い本の共通点は何かという、問の答えに出版社の方が、読者へのもてなしが十分になされている本が面白く売れる本だと答えていたのを思い出した一冊です。
図書館ではとんでもない順番待ちで、ほぼ借りるのをあきらめていたのですが、運よく別の図書館で発見でき、借りることができました。
読み終わって、ネタバレにならない程度に感想を書くとすると、何もかもがちょうどいい本だと思います。
不可思議な感じ、謎の量、オチの予想しづらさ等々が大すぎず、少なすぎず、わかりやすすぎず、ちょうどいいんだと思います。
読者を置いてきぼりにする感じもないし、登場人物も、極端な境遇ではあるけど、しっかり描写してくれていたので、ついていけました。
読後感は、じんわりあったかい、この本の表紙のクスノキのような気持ちになりました。
この描写の丁寧さが、読者への思いやりということなのかなと個人的には思った一冊です。