「錦繡」宮本輝ー生と死、未来と過去、男と女をありきたりにしない作品
#書簡小説 #現在より少し昔 #昔感はあまりない #日本 #元夫婦 #蔵王 #ドッコ沼 #凄惨で悲しいけど、先に進んでいく #みらい、みらい、みらい
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10月19日の一冊
- 書簡小説が気になる方
- 手紙の形式を気にせず、没頭できるが、やはり手紙でないといけないのだと思わされる本を読みたい方
- 生と死、過去と未来、男と女について思いふけってみたい方
に贈りたいと思います。
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今期一番のあたりはこの本かもしれないと、今の段階で、思った作品。
深い、重い、広がりを感じる、どれもあてはまるが、読後感は前に進むしかないのだと思わされるしかない作品。
人生は続いていくものであり、過去におきたことにとらわれ悲しみにふけることも、ああ、なぜ、自分がと思うことも、起きてしまった後は過去でしかないのかもしれないと思わされる作品。
主人公は、過去のある出来事で、離婚した夫婦。手紙のやり取りをすることになり、そこから、手紙のやり取りだけで話が進んでいく。
手紙の内容は、過去の出来事の顛末、それに至る経緯、それに対する互いの見方、今の二人のそれぞれの状況。ただ、それだけなのですが、筆まめを通り越して、こんな達筆な文章をかける元夫婦がいれば会ってみたいくらいの本当に分厚いであろう手紙の往復。
元夫婦であるがゆえ、いずれは手紙のやり取りが終わることは読者にも最初から分かっている。
この二人は今、互いのことをどう思っているか、それだけは二人の口からは、語られることは最後までない。語ることもできなければ、語れないであろうこともわかるが、この二人の言葉で表すなら、この書簡の相手はどういう存在なのだろうと想像したくなる。その文章をお目に係れないのが残念で仕方ない。
内容もさることながら、手紙の冒頭がもう、読者をひきつけてならないことまちがいなし。
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」
場所のイメージがまったくわかなかったので、ネットで調べてから読みだしたのが、大正解でした。
これから、読まれる方のために、いくつかの観光案内サイトを添付しておきます。
いままで、記したことはないですが、ぜひとも読んでほしいと思った作品です。